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ロシア連邦民法典の改正

2014.09.19

ロシア連邦民法典は、2012年以降何度か大規模な改正を経験している。これまでにも、消滅時効、有価証券、取引、委任状、及び法人設立に関する規定について改正がなされてきた。そして、去る2014年9月1日から、「ロシア連邦民法典第1部第4章への変更の導入及びロシア連邦法規の個別条項の失効の認定に関する2014年5月5日付ロシア連邦法律No.99-FZ」(以下、「本法」という。)が発効し、ロシア連邦民法典に法人に関する新たな事項(設立、再構成、解散及びその管理についての事項を含む)が導入されることとなった。これは、過去20年間にわたるロシア民法の改正の中でも比較的大きな意義を有するものと思われる。以下、個別の事項について簡単に述べる。

先ず、設立に関する規定の変更についてであるが、本法では、原則として、定款のみが各法人の唯一の設立文書であるとされた(従前は「発起人契約」も設立文書として認められていた。)。更に、モデル定款(типовой устав)を利用した法人設立が可能とされることとなった。これにより、法人の登記手続の簡略化が見込まれている。定款には、法人の名称、その所在地のほか、法人の活動の管理手続を定め、当該形態の法人のために法律に規定されるその他の事項を記載しなければならない。非営利団体(некоммерческая организация)及び単一企業(унитарное предприятие)の定款には、更に同法人の活動の対象及び目的を記載しなければならない。

また、本法は、法人の代表権限について規定した民法典第53条1項に第3段落を新たに加え、(定款に規定することにより)複数の者が同一の法人を代表することが可能となった。従前は、法人の代表者は一人の代表取締役(単独執行機関)に原則として限られていたが、今後は、共同で又は互いに独立して活動を行う複数の代表者を設置することが可能となる。
上記は「二つの鍵」の原理(принцип «двух ключей»)と呼ばれ、今回の民法改正の重要な目玉の一つであり、法人の管理方法についての企業の選択肢が増加することになると思われる。今後は、例えば、定款において、ある事項につき2人の取締役の同時決議を要すると定め、その他の事項につきいずれか1人の取締役の決議で足りることを規定することが可能となる。
更に、本法は、法人の住所についての規定を導入することとした。以前は、民法典第54条において、法人の名称のほか、法人の所在地についての規定が設けられていたが、今後、法人の統一国家登録簿(ЕГРЮЛ)には、法人の所在地に加え、法人の住所を記載することが必要となる。この法改正は、法人が虚偽の住所を使用することへの対策であり、統一国家登録簿に記載された住所宛に郵便物が届いた場合、同法人に届いたものと見なすこととされた。

このほか、法人の再編成(組織再編)についても改正がなされ、再編成の複数の形態(例えば、合併と改組)を組み合わせることが可能となった(民法典第57条1項)。更に、様々な組織的法的形態の複数の法人が同時に再編成を行うことが可能となった(例えば、複数の有限責任会社が、同時に株式会社と合併する等)。再編成によって設立される法人は、再編成決定の異議申立期間(原則としてその期間は3ヶ月となる)が経過するまでは国家登記ができないという制限が課されている。
民法典には、第60.1条が追加され、再編成決定が無効として認められた場合の結果が規定された。再編成決定が無効であるとの請求は、再編成法人の構成員及び法律に定めされたその他の者が行うことができる。請求期間は、法令上別段の定めがある場合を除き、統一国家登録簿(ЕГРЮЛ)に再編成手続についての記載がなされてから3ヶ月間とされた。なお、上記の場合において裁判所が再編成決定を無効であると認めた場合であっても、再編成によって設立した法人は解散されず、その法人が行った取引も無効とはならないが、再編成に反対した構成員及び再編成された法人の債権者は、被った損失の賠償を請求できることになる。

他方で、民法典第60.2条の規定に基づき再編成が不存在として認められた場合、再編成によって設立された法人は解散され、再編成前の法人が復元することとなる。設立された法人と、その権利能力を信頼した者との間でなされた取引は、復元された法人に対しても有効である。なお、再編成不存在の請求権は、再編成に対して反対する旨投票し、又は投票に参加しなかった、再編成された法人の構成員のみ有する。

本法によれば、全て法人は、コーポレート(корпоративные)法人とユニタリ(унитарные)法人に分かれる。コーポレート法人においては、発起人(構成員)がそれに対して参加する権利及び最高機関を構成する権利(すなわち、発起人が当該法人の出資者として最高意思決定機関となる権利)を有している。ユニタリ(унитарные)法人の発起人は、その構成員にならず、メンバーシップ権利(право членства)も有していない。

本法は、法人形態についても変更を加えている。すなわち、本法の下では、人的会社(хозяйственные товарищества)の組織的法的形態に対しては変更はなされず、従前どおり合名会社(полное товарищество)及び合資会社(товарищество на вере)の形態で設立することが可能であるが、物的会社(хозяйственное общество)の組織的法的形態については、補充責任会社(общество с дополнительной ответственностью)が廃止され、有限責任会社及び株式会社の形態のみが残ることとなった。

また、従前は、株式会社は、公開型株式会社(открытое акционерное общество)と閉鎖型株式会社(закрытое акционерное общество)とに分けられていたが、本法によってこの区別がなくなり、公共株式会社(публичные)と非公共会社 (непубличные)とに分けられることになった。公共株式会社は、発行する株式の公募(открытая подписка)を行い、その株が公開流通する。上記の条件に当てはまらない株式会社及び有限責任会社は、非公共会社である。

最後に、実務上影響が大きいと思われる改正について述べる。
すなわち、本法の規定に基づき、構成員総会によって決定された事項及びその総会に参加した構成員について、第三者による確認を経ることが必要となった。これは、公共株式会社の場合には、同法人の株主名簿の登記機関(регистратор реестра акционеров)が確認手続を行うこととなるが、非公共株式会社の場合には、登記機関又は公証人が確認手続を行うこととなる。外国企業のロシア子会社の法人形態として採用されることが多い有限責任会社については、公証人が確認手続を行うことになる。今後は、構成員総会による決議事項については、決議の都度公証手続を経ることが求められる点に留意する必要がある。

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